父の死亡前に預金を引き出しておけば相続税は課税されないと聞きましたので、引き出したお金を除外して相続税の申告をしました。問題はありませんか?

 相続税の課税の対象となる財産は、相続開始の時(被相続人が死亡した時)の財産ですから、死亡前に預金を引き出しておけば、遺産総額をその分だけ少なく申告しても良いように思われるかもしれません。

 しかし、死亡前に預金を引き出したとしても、死亡時点では「預金」が「現金」という別の財産に変わっただけで、被相続人の遺産であることに変わりはありません。

 仮に、相続税の申告期限までに、その現金をお葬式の費用などに使ってしまった場合でも、相続開始の時に現金として残っていた以上は、やはり被相続人の遺産として相続税の課税の対象になってしまいます。


 税務調査では、死亡前に預金が引き出された場合、被相続人の医療や介護にどれだけのお金が使われたか、または被相続人やその親族の生活水準がどの程度だったかなど、引き出された現金が死亡までにどのくらい使われたかが調べられます。


 ところで、引き出したお金で生前に墓地や仏壇などを購入しておくことがありますが、この方法ですと、これらの購入のために使われたお金の分だけ、相続財産は確実に減少します。

 確かに、この場合でも「預金」が「墓地」などの財産にに変わるだけですから、相続財産は変わっていないように思われます。ところが、墓地や仏壇に課税する事は国民感情から見て好ましくないため、これらの財産は相続税の非課税財産とされているのです。このように、生前に墓地や仏壇を購入しておくことは、賢い相続税対策の一つと言えるでしょう。